カムログインプラント概要
はじめに
近年インプラント補綴は歯科医療に不可欠なものとして確立されて参りました。
患者サイドの期待と要望は確実に大きくなっています。従って、現在のインプラント治療のコンセプトはその究極の目標として、審美・機能・発音を含んだ心理社会的なリハビリテーションでなければなりません。
このことは、外傷で切歯を1本喪失したケースから、残存歯に歯周疾患の合併症があるような複雑な治療、あるいは重度に吸収した上下顎の治療に到るまで同様に当てはまるものです。
本マニュアルは治療の成功を、早く、効果的に促進する補助となるものです。
さらに本マニュアルは治療計画の論理的な手順と歯周-インプラント補綴修復の実際に即したレイアウトになっています。
まずインプラントの形態や機械的、生態力学的特長に馴染んでいただき、次いでカムログシステムのインプラント-アバットメント連結を理解していただきます。
補綴のコンセプトを見ていただく前に、良好な治療結果に繋げるための基礎となるバックワードプランニング(トップダウントリートメント)法とチームアプローチについても概説します。
治療コンセプトのセクションではカムログインプラントを用いた補綴のオプションを説明します。
・外科
・補綴
・フォローアップ
注意
本マニュアルに記載の事項のみでは、カムログインプラントシステムを即座に使用するには不十分です。 カムログインプラントシステムの操作に習熟した術者による指導を受けることを強く推奨します。カムログインプラントとアバットメントはシステムのトレーニングを受けた歯科医師、医師、外科医、歯科技工士によっ てのみ使用が認められます。 カムログ社並びにその代理店によってコースやトレーニングセッションが常時提供されています。 治療において方法を間違われますとインプラントや周囲骨の重篤な喪失に繋がります。
カムログシステムの解説
カムログインプラントシステムはDr.Axel Kirshとそのチームによるインプラント外科、補綴の長期にわたる経験に基づいて開発されました。 Dr.KarlLudwig Ackerman、歯科技工士Mr.Gerhard Neuendorff、Mr.Walter Dürrからなるチームはカムログシステムの開発によって既存のシステムの治療上の欠点や、審美、機能面での限界を改善しようとしました。 そのことが革新的で優れた治療コンセプトへと繋がっています。
カムログインプラントシステムはその後も多くの病院や大学・歯科技工所との連携によって、さらなる研究開発を続けています。
インプラントの形態
マクロの形態
全てのインプラントはチューブインチューブのカムログコネクションとなっています。
4種類の異なった外形のインプラントが用意されており、同一直径のものは全て同じ内部の形状を備えています。
このことは補綴物の削合、変更なしに各形態のフィクスチャーを同一歯列内に使用できることを意味します。
(各タイプの推奨される適用例を参照ください。)
外部の形態
カムログインプラントのスクリューライン、ルートフォーム、スクリューシリンダーの各タイプの表面はプロモート加工されており、歯冠側に高さ1.6mmの円筒状の機械研磨面を持ちます。(1)
次に機械加工されたシャンファー部―バイオシールベベル(高さ0.4mm)が続きます。(2)
その下方にはスクリューライン、ルートフォーム、スクリューシリンダーのセルフタップのねじ部(プロモート表面)が続きます。(3)
シリンダータイプの場合はこの部分がTPS(チタンプラズマスプレー)表面です。
内部の形態
どのタイプのインプラントも歯冠側のインプラント上端部(4)から始まる3つのシンメトリカルなカム溝(120°ごと、幅0.5もしくは0.7mm、長さ1.2mm)が円筒部の内側に付与されています。(5)
アバットメントのカム部分がこのカム溝に嵌合します。
このカム溝の下方には内ねじの上部(6)があり、この部分にカバースクリュー、ジンジバフォーマー、ブリッジ用アバットメント、その他様々な補綴パーツのオス部がねじ込まれます。
この上部内ねじの下方には短い円筒部分があり、ここまでアバットメントのチューブ部が入ります。(7)
さらに60°のオフセット部を経て2番目の内ねじが続きます。(8)
この部分にはアバットメントのフィクシングスクリューM1.6もしくは2.0がねじ込まれます。
バイオシールベベル/インプラントショルダー
プロトコールに従い埋入を行うとインプラントのショルダー部は約0.4mm骨レベルから上方に出ます。
フィクスチャーと形成された埋入窩はインプラントショルダー下部の面取り部分(バイオシールベベル)によって完全に封鎖されます。
プロトコール通りに埋入した場合、骨が約1mm根尖方向に適合することによって、結果として約2mmのバイオロジカルウィズ(1mmの結合組織付着と約1mmの上皮付着)が獲得されます。
このことはプロモート表面、TPS表面のインプラント共に共通です。
表面性状
プロモート表面構造
プロモートはマクロ、ミクロの表面性状をしています。
カムログインプラントのスクリューライン、ルートフォーム、スクリューシリンダーの各タイプはプロモート表面です。
このサンドブラスト/酸処理表面が強固なインプラントの固定をもたらします。
細胞培養や骨組織像、引き抜き試験などでこのことは証明されています。
これらの結果からプロモート表面はカムログインプラントの速やかなインテグレーションを促進することが示唆されます。
チタンプラズマスプレー(TPS)の表面構造
カムログシリンダーインプラントは骨に入る部分がチタンプラズマスプレー(TPS)性状をしており、これは長期の研究によって信頼性の高いものであることが示唆されています。
チューブ イン チューブコネクション
インプラント治療を受けた患者のインプラント周囲の軟組織、硬組織の長期のメンテナンスは口腔衛生と術前、術中、術後のソフトティッシュマネージメントに大きくかかってきます。
インプラント支持補綴の生体力学はインプラントのデザインとインプラント-アバットメントコネクションのコンポーネントによって左右されます。
たとえインプラントの数が適切で、埋入位置が正しくとも、インプラントとアバットメントの連結部には常に負荷(クラウンの咬合を通じて)と、力の吸収(骨内にインテグレーションしたアンカーとして)との間の機械的にクリティカルな界面が存在します。
膨大な数の研究がアバットメントスクリューの緩みや破折がこの部分で生じる可能性を示しています。
使用されるインプラント-アバットメントの連結によっては最大値以下の負荷でも生じています。
従って、インプラントとアバットメントのコネクションのデザインは非常に重要です。
エンジニアリングの分野では直径と挿入長さの比が1.4以上の連結をフォームフィットコネクションと呼んでいます。
カムログシステムに用いられているインプラントとアバットメントの連結は直径と挿入長さの比がインプラントの直径に応じて1.5から2.4のフォームフィットコネクションになっています。
パテントで保護されたカムログコネクションのデザインの特徴によって物理的強度や圧縮疲労強度も改善されています。
こうしたレベルを維持し長期の安定を確保するために、どのような理由があろうとも連結部を修正、変形させないでください。
製造精度
インプラントとアバットメントの内部や外部の形状はミリングで削合されるカムとカムの入る溝を除いて機械加工されて います。 このことは製造時の許容誤差が極めて微小に抑えられ、また回転方向の安定性を伴った精密適合(0.5°-1.0°)が全てのパーツに関して獲得できていることを意味します。 このことはさらに、インプラント位置の模型へのトランスファーから最終の口腔内装着に到る補綴物の製作において、不可欠な要素でもあります。
材質
カムログインプラントは全てタイプ4の純チタン製です。 アバットメントやアバットメントスクリューはTi6Al4V(ASTM F136)のチタン合金製です。
力学並びに生体力学的構造
力学試験
30°の角度から加えられたベクトルLの負荷は軸方向の力(Fa)と側方への力(Fq)に分散されます。軸方向のパーツと側方力は支点(D)から、てこの長さの機能としてのスクリューの維持力によって補完されねばなりません。
有限要素法による研究ではアバットメントに垂直、側方力が加えられた場合、この応力はインプラント体に挿入されるチューブの根尖方向先端部を通して伝達されることを示しています。
アバットメントスクリューへの負荷はほとんど生じていません。
破折荷重
エクスターナルヘックスタイプのφ3.75mmのスクリュー型インプラントモデルに破折荷重(30°の角度で300N)をかけた場合で比較すると、カムログのアバットメントスクリューにはほとんど応力が集中していないのがわかります。(青=応力:低、赤=応力:高)
ねじれ荷重
カムがインプラントに接する瞬間までトルクをかけた場合、製造上の遊びすなわちインプラントに対するアバットメント
装着の精度を見ることができます。
インプラント-アバットメントの連結部に加わる応力は非常に小さくなっています。(青=応力:低、赤=応力:高)角度偏向が小さいほどインプラントとアバットメントの位置のトランスファーの精度(印象精度)は高いといえます。






